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TOP > SAMT-NETセミナー > ヤンデル先生の対比教室 第1回

   アンケートなんて無かった
こんにちは。病理広報・ヤンデルでございます。お付き合いのほどをよろしくお願い致します。

 第 1 回に先駆けて、 3 月号にてアンケートを配布させていただきました。「本コーナーで毎月 1 つ取り上げる臓器・疾患を募集。肝臓、乳腺、甲状腺、消化管だろうが胆膵だろうが婦人科臓器だろうが、何なら唾液腺でも血管でもエクトプラズムでもかまいません。病理画像を見せろ、エコーの画像がどうしてこう映るのかを教えろ、そんな疑問にお答えします。初心者大歓迎!」と、にぎにぎしく募集をかけましたところ、なんと 86 通ものご応募を頂戴し、それがたった今!原稿締め切りの日に!集計されていない生データの状態で!私の元に届きました!……い、今からどうしろと!?

 ということで今回はアンケートの集計が間に合いませんでした。そこで、まずはエコー・病理対比の基礎とも言える「甲状腺乳頭癌」についてお話ししようと思います。次回より、アンケートに頂いたご意見・ご質問にどんどんお答えして参ります。ご応募いただいた皆様、誠にありがとうございます。今後もお待ちしております。

 甲状腺の日常画像診療において、最も拾い上げの必要性が高い疾病は言うまでもなく乳頭癌であります。日超医の診断基準(案)では、「腫瘤の形状」「境界の明瞭性と性状」「内部エコー」、副所見として「内部の微細高エコー」「境界部の低エコー帯」等を読影し、悪性か否かを推測していくべし、とあります。

 これらの所見は、乳頭癌のプレパラートではどのような像として表れているのでしょうか。

まとめて一言で言いますと、「ムラがすごい」。

右に示す Azan 染色像(線維を薄いブルー、細胞成分をピンクで染める)をご覧ください。実線が病変の最外縁(=境界)、実線とその内側の点線で囲まれたリングが線維性被膜です。病変境界部はでこぼこ・ギザギザ。線維性被膜の厚さも場所によってかなり差があり、腫瘤内部にブルーの線維がトゲのように入り込んでいる所もあります。病変内にも様々なムラがありますね。

このような「ムラ」こそが、乳頭癌の特徴です。そして、「がん」一般の組織学的イメージでもあります。

癌細胞は、増殖するにつれて、周囲の正常組織と戦ってこれを破壊します。この破壊の前後で、癌細胞は自らが暮らしやすいように環境を整えていくのですが、このときに「線維化」(腫瘍間質の形成)が生じます。

一方、正常組織の側も、癌細胞の侵略を防ぐため、癌の最前線に「土のう」を築くような防御反応を起こします。これも、「線維化」(被膜の形成)につながります。

このように、攻める方も守る方も線維化を起こすため、病変内や境界部には同時多発的に線維化( Azan 染色のブルー)が生じ、ムラのある被膜や、内部の線維化・石灰化が生じます。

 なお、良性腫瘍(たとえば濾胞腺腫など)では、このような「攻めるも守るもセンイカ!センイカ!」という 線維化ブーム (腫瘍間質の形成や被膜形成など)は起こりません。せいぜい病変の境界部に、「まあここからはお前の領地、ここからは俺の領地で行こうや」的な薄い被膜ができる程度です。

 「癌は正常組織と戦いながら、あちこちでムラのある線維化を起こす ムラムラ野郎 である」というイメージは、この先、他臓器の癌のエコー画像を理解する上でも重要です。第 1 回はこんなところで!次は乳腺か!?

( ・∀・ ) ノシ