札臨技
事業予定
統一化
SAMT-NETセミナー
登録
共催事業
LINK
会員専用ページ
TOP > SAMT-NETセミナー > ヤンデル先生の対比教室 第12回

第12回:世の中に自分でなければできない仕事とか自分がいなければ成り立たない場所なんてそうそう存在しないのではないかと思うわたくし

 前回原稿を書いたのが 12 月の終わり、今日のこの原稿を書いているのは 2 月の中旬ということでちょっと間が開きました。本日もどうぞよろしくお願いいたします。  
さて、 4 月 12 日に開催される「日本消化器がん検診学会・北海道地方会 第 12 回超音波支部会」で、教育講演を行うことになりました。内容は、「肝腫瘤性病変と病理組織の対比」。このテーマ、かつて札臨技の講演で何度かお話ししたテーマとほぼ同じです。 4 年ぶりくらいにあの話をやることになります。ご参加いただける方、どうぞご期待下さい。会場には 400 人は入るようですよ。
で、本日の本コーナーですが、この教育講演用に書いてみたはいいものの「ちょっと調子に乗りすぎたためこれからボツにしようとしている原稿」をそのまま載せようと思います。再利用です。エコですね。内容はきついです。

 昨今、ソナゾイド造影や高感度ドプラ法などが普及しはじめたことで、精密検査における超音波検査の有用性が多数報告されている。そして、「がん検診」においても腹部超音波の役割が大きいことは自明である……と言いたいところであるが、それは本当か?

超音波検査は「低侵襲」で「リアルタイム診断能が高く」、「空間分解能に優れている」、「素晴らしい検査である」。しかし、優れた検査とは、利点の多さだけではなく欠点の少なさでも語られなければならない。あらためて「検診における超音波検査の有用性」を論じようとすると、最低でも以下のような項目を立てて検討しなければならない。
  1. 主観的評価による術者間格差はどれくらいあるのか: 「一人の天才でなければ見つけられない検査」は、「多数の人員を投入して行う、多数の人間に対する検査」としてはなりたたない。術者間格差を縮めるためには
    1. 施設内外における定期的な訓練・評価体制の構築(教育)
    2. 検査手順の均一化、標準化(均霑化)
    などが有用だが、これらは超音波検診においてどれだけなされているか。

  2. 超音波検査がなければその疾患は本当に見つからなかったのか: 例えば肝細胞癌が血液検査でわかるなら、暗室で 15 分寝かせて超音波検査を施行するよりも検診患者の負担は少ない(メタボリックシンドローム全盛の昨今、血液検査を行わない検診というのは激減している)。超音波検査を検診に導入することで疾患の発見率はどれだけ増えたのか。それは超音波でなければ見つからないのか。

  3. 超音波検査で見逃した疾患はどれくらいあるのか: 施設から出てくる報告は基本的に「○○を見つけました」である。自分で見逃した疾患を自分で振り返るのは非常に難しく、きちんとした統計処理で数学的に「見逃した可能性」を追求しないと自施設の検査の妥当性評価・精度管理は困難である。超音波検査以外の検査で後日指摘された病変はどれほど存在するのか。

  4. 超音波検査で見つけた疾患は治すことができたのか: 治療不可能な進行病変をピックアップすることも時には大切だが、無症状で治療不可能な疾患を見つけ出すことが患者の利益としてどれだけ許容されるかについては否定的な意見も多い。見つけた疾患の中に早期病変、進行病変はどれだけ含まれているのか。
こうした内容を評価せずに「自分でプローブを持って超音波検査をしたら 2 年間で 3 人の肝細胞癌をみつけることができました、だから超音波検査は検診に向いています」では、「超音波検査による検診は医療者の独りよがりに過ぎない」との誹りを免れることはできないであろう。
(このあと具体論に入る)
----------
ここからの話は「検診発見のカテゴリー分類を勉強する時にも、一例一例を大事にして病理対比をきちんとやってその意味を考えようぜ」と進んでいく予定なのですが、さて、どうなりますことやら。ていうか、こんな文章を載せたらわたくしはおそらく消化器がん検診学会に怒られるのではないでしょうか。

( ・?・ ) キャリアに危険が及ぶ :