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TOP > SAMT-NETセミナー > ヤンデル先生の対比教室 第14回

第14回:ヘッドハンティングをお断りするときに「任侠の世界ですから」って答えるのが流行り

 こんにちは。病理医ヤンデルでございます。原稿を書いているのは5月30日、そろそろJSS39(超音波検査学会・名古屋)が近づいております。「教育講演I」を仰せつかったわたくし、若干緊張しておりますが、この原稿が掲載される頃には全部終わっていて優雅な毎日です。このタイムラグが毎回歯がゆいのであります。うまくいくかしら。
 本日は肝炎の話です。
 肝炎、肝硬変というのは非常に重要な疾患で、診断も治療も複雑です。肝炎の進行度評価は一般に「新犬山分類」で言い表されていますが、これに若干の問題があります。
 問題とは、「B型肝炎もC型肝炎も、自己免疫性肝炎(AIH)も原発性胆汁性肝硬変(PBC)も、アルコールも非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)も、すべて新犬山分類で表現してしまっている」ということなのです。
 新犬山分類では肝臓の炎症を「A0〜A3」で評価し、肝臓の線維化を「F0〜F4」で評価します。F4は肝硬変です。
 近年は、Bモードやドプラ、組織弾性評価(エラストグラフィ。フィブロスキャンなど)で、F因子を予測できるかどうか検討した報告を、いろいろな学会で耳にします。
その報告の大部分が、「ウイルス性肝炎」と「アルコール性肝炎やNASH, AIH, PBC」を混ぜて検討してしまっているようです。
病理組織像を知っている人間からすると、これは「あり得ないこと」です。
ウイルス性肝炎のF2と、NASHのF2が、「同じ程度の硬さであるはずはない」と推測されるからです。
具体例をあげましょう。

これは、C型肝炎によってF3?F4まで進行した肝臓です。Azan染色で膠原線維を青く染めています。膠原線維が、門脈域をブリッジング(橋渡し)するように伸びており、編み目を張り巡らせたように肝組織が分断されています。偽小葉の構築の所見です。典型的なウイルス性肝炎、肝硬変直前(F3〜F4)くらいに相当します
もう一例出します。こちらはNASHです。

 これもF3〜F4症例です。先ほどのC型肝炎症例と同じように、線維の網が張り巡らされていることがわかりますね(=F4)。しかし、なんだかC型肝炎と比べると、「青い部分の雰囲気が違う」ようにも見えます。
 それぞれの拡大像を提示します。

 左がC型肝炎、右がNASHです。右のNASHの方が、「もやっとしている線維化」だと思いませんか?青い線維が細かい感じがありますよね。
 ウイルス性肝炎、特にC型肝炎は、肝臓の中に比較的等間隔に分布している「門脈域」で炎症を起こす病気です。門脈域での炎症が強くなるにつれて、「門脈域同士をつなぐような線維化(ブリッジング)」が起こり、肝硬変につながっていきます。
 これに対し、NASHやアルコール性肝炎は、いずれも肝臓の脂肪沈着に由来した線維化を来す疾患であり、脂肪沈着を起こした肝細胞1個1個の周囲に細かい線維形成を生じます。門脈域同士のブリッジングも、非常に細かい状態からスタートします。先ほどの右の写真は、「細胞1個1個の周りにも細い線維があるため、なんかもやもやして見える」のです。
 炎症の原因によって線維の増え方は違うにもかかわらず、新犬山分類ではどちらも「F3〜F4」と表されます。このことを頭に入れておかないと、ウイルス性肝炎のF2とNASHのF2を混ぜてエコー像を検討するというような「違うモノを混ぜてしまう検討」に陥ってしまいます。といってもこの問題、専門の肝臓内科医すら気づいていない場合があるので、根は深いですが……。
( ・?・ ) 根深い業を背負う :