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TOP > SAMT-NETセミナー > ヤンデル先生の対比教室 第2回


第 2 回:アンケートに「そろそろ元妻と子供をネタにするのをやめないと次の結婚ができないと思います」とあったがどういうことか

 原稿を書いているのは 5 月 31 日木曜日。週末には JSS 札幌大会で皆様にお会いしているはずの対比病理医ヤンデルでございます。「小腸疾患・基調講演」はいかがでしたか。すべってましたか。 N 田学会長は激怒しましたか。

先日皆様からいただいたアンケートにあらためて目を通しますと、「連載序盤は基礎的な話をやってくれ」というご意見が多かったです。そこで今回も、前回に引き続き、少し総論的な事をお話ししようと思います。ただ、将来的には、 1 症例ごとの対比を中心に連載を進めていくつもりです。超音波・病理対比のキモは 1 例対比にあると思いますのでね。今年度もどんどん研究会でお会いしましょう。

 さて今日のお話は、癌の「上皮・間質比」について。この堅い話を、いかにフニャフニャに柔らかくわかりやすくするかが腕の見せ所です。腕折れそうですね。

B モードにおける病変内部エコーの高低や、造影エコーにおける血流量・血流速度などを考えるとき、よく会話に出てくるのが、「線維化が多い」とか「細胞密度が高い」とか「ムラが多い(連載第 1 回参照)」といったキーワードです。これらはすべて、癌細胞と間質(線維とか血管とか液状成分など)の量比に関係があります。ある結節の内部が、「ほとんど癌細胞だらけで、癌細胞の隙間を血管が走っているだけ」なのか、「線維性間質がメインで、その中に癌がまばらに存在している」のか……。

わかりづらいですね。そこで、癌細胞を家に例えてみます。血管を道路に例え、線維性間質を木や森に例えます。右下の写真二つをご覧下さい。上が地下鉄円山公園駅付近の住宅街、下が円山の山の中を撮った航空写真です。これを使って説明します。駅前の方は住宅密度(=癌細胞の密度)が高く、家が何軒か密集してカタマリ(腺管や小胞巣)を作り、カタマリとカタマリの間に道路(=血管)が走っています。木々(=線維化)はあまりありません。これに対し、山奥の方は住宅がまばらで、道路はきっとケモノ道とか遊歩道がいっぱいあるんでしょうけどあまりよく見えなくて、自然が豊富です。北海道ばんざい。

上皮性腫瘍には、大別してこの「都会型」と「山奥型」の 2 種類の胞巣様式があります。代表疾患を列挙しましょう。 SPN は正確には上皮性腫瘍じゃないですけど。

【都会型】

肝細胞癌、腎細胞癌、乳癌のうち髄様癌や充実腺管癌の一部、甲状腺濾胞腺腫や濾胞癌、内分泌腫瘍(カルチノイド腫瘍や神経内分泌癌)、膵 SPN 、副腎腺腫など

【山奥型】

肝内胆管癌、甲状腺乳頭癌、乳癌では硬癌やほとんどの乳頭腺管癌、通常型膵癌、そのほか多くの臓器の一般的な腺癌(間質に線維形成 desmoplastic reaction を伴うもの・連載第 1 回参照)など

この例え方は、 B モードにおけるムラの生じやすさや後方エコーの減衰度合いを理解する上で役に立ちますが、それ以上に血流に対するイメージがつかみやすくなります。都会の方は道路が整備されていて、人や荷物(酸素や栄養だけではなく、ホルモンやサイトカイン、代謝産物など)の出入りにいかにも便利そうです。内分泌系の腫瘍が都会型なのも納得。実際の症例においても、都会型の病変は血流の流入・流出速度がともに速いことが多いです。これに対し、山奥型の血流は、都会型に比べると、流入もやや遅いですが 特に流出が遅くなります 。「行きはよろよろ、帰りは迷子」。なお、嚢胞内結節性病変や粘膜内病変はちょっと例え方を変えなければいけないのですが、イメージとしては都会型に近いです。

この辺はあくまで総論ですので、詳しくは、今後の連載で 1 例ごとに触れていくことにしましょう。

研究会で、血流が早く wash-out も速やかな低エコー結節を見て「都会型っぽいですね」なんて発言すると N 田さんあたりにバカにされますので、その場合は「組織学的に腫瘍・間質比が高く、腫瘍胞巣間を細い血管が網状に走行して、 alveolar pattern を形成するような腫瘍が予測されます。 NET 、鑑別として SPN 、通常型膵癌は否定的です」のように発言すれば、会場の注目を一身に浴び、女子力 up して婚活もはかどるはずです!

ヽ ( ・ ∀ ・ ) ノ 女子力高い病理医の