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TOP > SAMT-NETセミナー > ヤンデル先生の対比教室 第3回



第 3 回:日経メディカル系列の某雑誌から「『離婚ドクター特集』にヤンデル先生の名前で出てください」と言われて呆然とした

みなさんこんにちは。最近 twitter 発信の Web ラジオをやるようになりまして、いよいよ本職がよくわからなくなってきた病理広報ヤンデルこと札幌厚生病院の市原でございます。 Twitter のフォロワーさんの数は現在 3000 人。ウソップなら「俺には 3000 人の部下がいる!」と嘯くところです!

茶番はいいとして、今回は少々珍しい甲状腺症例を 2 例ほど提示し、「エコー対比の落とし穴」について考えてみようと思います。提示する 2 例は、先日の甲状腺談話会にて当院から発表された症例です。

【 1 例目】
20 歳代前半の女性で、家族性大腸ポリポーシス( FAP )の患者さんです。甲状腺左葉に、形状整、境界明瞭平滑、内部エコーやや不均一、後方エコー増強を呈する長径 14.5 mm 大の低エコー腫瘤を認めました。手術検体では「甲状腺篩(ふるい)・モルラ型乳頭癌」という特殊な乳頭癌と診断されています。「篩・モルラ型」については各自お勉強していただくとして(※そうそう頻繁に経験する疾患ではありません)、本コーナーではエコー像と病理像の対比に専念しましょう。

組織像写真に、いくつかの補助線を引きました。実線は病変の最外周部分(境界部)です。通常の乳頭癌と比べると輪郭がスムースで、凹凸の少ない病変です。点線で図示した線維性被膜や隔壁を見ると、通常の乳頭癌に比べ被膜の不整さ・厚みのバリエーションや内部に対する突出などが少ないことがわかります(通常型乳頭癌のルーペ像については連載第 1 回を参照してください)。これらの所見が反映され、エコーでは、一見すると良性腫瘍のような整な輪郭・境界性状を呈しています。さらに、「篩・モルラ型」はその名の通り、一部に篩(ふるい)状の構造を伴います(写真右下・拡大図)。細かい穴がいくつも空いた構造は「(微小)嚢胞の集簇」と同様に、後方エコーを増強させる効果があります。

【 2 例目】
20 歳代半ばの女性です。甲状腺左葉に、形状整、境界明瞭平滑、内部エコーやや不均一、後方エコー増強を呈する長径 11.9 mm の低エコー腫瘤を認めました。エコー所見を文章にすると 1 例目とそっくりですが、組織像はまるで似ていません。本例の病理診断は「硝子化索状腫瘍」です。比較的まれな腫瘍で、良性のことが多いのではないかと言われています(良悪についての結論は出ていない)。

 

輪郭は整で被膜はかなり薄いです。内部はほぼ均一で、嚢胞成分などはまったくありません。本例の病変内には紡錘形の腫瘍細胞と血管が非常に密に詰まっており(写真右下・拡大図)、「内容物が均一にパックされていること、線維化が少ないことにより、超音波ビームの反射や散乱が起こらず後方エコーが増強した」と考えられます。

 いずれも後方エコーが増強する病変ですが、その理由(機序)がガラリと違う 2 例です。「なぜこの 2 例のエコー所見は似ているの?」という質問に答えるには病理写真が必須であり、診断名だけでは手も足も出ません。日常診療の現場で病理の写真を手に入れるのは大変かもしれませんが、特に問題症例については、ルーペ(弱拡大)写真だけでも入手できればかなり理解が深まるでしょう。

( ・ ∀ ・ ) 日経メディカルゆるさん