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TOP > SAMT-NETセミナー > ヤンデル先生の対比教室 第5回

第5回:ネットの世界と現実の世界を分けたがる奴はたいてい現実世界も過度に細分化していて「ほんとうのじぶんさがし」に余念が無い

原稿が載るのは新年号ですね。あけましておめでとうございます。原稿書いてるのは 11 月です。「原稿仕事の時差」が出てくると、まるで自分がエッセイストか芸能人になったかのように錯覚しますね。すみません疲れています。

本日は、乳癌の乳管内進展についてのあれこれです。まずはこちらの画像をご覧ください。

 左乳腺 C 領域内の約 15mm 大の低エコー結節です。境界は明瞭ながら粗?、輪郭不整形であり、内部性状はやや不均一、前方境界線のあたりは断裂しかかっています(他の写真でもっとはっきり断裂しているのですが提示しません)。今日注目するのは、緑色の点線で示した部分。乳頭方向に低エコー成分が伸びています。スケールが入っていませんが、太さにして 7mm くらいでしょうか。

 これを見て、「乳管内進展だ!」と読影し、実際に病理のレポートを見て、 intraductal spread (+) と書いてあるのを見て安心する、といった対比をよく目にします。しかし、これは本当に乳管内進展像そのものを表しているのでしょうか?

対比をしてみましょう。緑丸の領域を「輪切り」にした図を出します。下の図がそれです。

8 × 5mm 大程度の、「色の濃い」領域を認めます。色が濃いというのは、細胞核(青紫に染まる)が多い=細胞密度が高いことを反映しています(ちなみに細胞質の好酸性=赤みも上昇しているため余計に濃く見えるのだが割愛)。この領域には周囲に比べて多くの細胞が密に存在しているため、低エコーを示します。「腫瘍が進展しているから低エコー」というのは合っていました。しかし……。

 拡大すると、この濃い領域には、非常に多くの乳管がひしめきあっていることがわかります。 径 8 × 5mm 大の乳管が一本だけ伸びているわけではない 、というのがポイントです。一つ一つの乳管は 1mm にも満たず、 100 μ m に達しないような乳管も多く存在しています。

 つまり、エコーで拾う事ができる「乳管内進展像」の多くは、正確には「 乳管という乳管の中に癌が入りまくって束になってまとめて進展しているんだ像 」であります。細かい枝葉のレベルで起こっている乳管内進展像は、現在のエコー解像度や検査手技ではなかなか指摘する事ができません。乳管内進展がある程度より集まって、「幹に近い、太い枝から末梢の枝葉までをまとめてごっそり侵すレベル」になってはじめて視認できます。

 将来的には、ソナゾイド造影の応用で「枝葉」が見えるようにならないかなーとか、病変内部の性状から乳管内進展を予測できるようにならないかなーとか、いろいろ考えてはいるのですが、その辺はまた機会をあらためて。

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